ニシンは日本沿岸を回遊し、体長20〜30㎝に成長します。春先、北海道沿岸に大群で押し寄せることから「春告魚」と呼ばれたニシンを獲るニシン漁は、江戸時代後期から明治時代にかけて北海道の基幹産業でした。その後、漁獲量が次第に減り、一時は「幻の魚」といわれるほどに。そんなニシンに復活の兆しが。稚魚の放流や資源管理の成果により、近年、少しずつ漁獲量が回復し、ニシンが大量に沿岸に押し寄せ、産卵・放精によって海が真っ白に染まる「群来(くき)」も目撃されるようになりました。

 ニシンはオホーツク海、日本海、太平洋に広く分布していますが、北海道でとれるニシンは味・栄養ともに優れているといわれています。現在では数の子などの加工品がおなじみですが、身も卵もうま味の強いニシンは、ぜひ、素材のおいしさを味わっていただきたいお魚。塩焼きをはじめ、三平汁、梅干し煮などの煮物、マリネなど調理法も多彩です。

 健康づくり欠かせない今注目の成分も豊富に。ニシンの脂に多く含まれている多価不飽和脂肪酸「EPA」・「DHA」は血栓を防ぎ、動脈硬化を予防します。「DHA」はさらに記憶力や学習能力にも好影響を及ぼすといわれています。

 「ビタミンD」はカルシウムを体内に吸収する際に欠かせない栄養素。生ニシン四半身~半身で※1成人の1日の摂取目安量(8.5μg)を満たすことができます。そのほか、たんぱく質の代謝に欠かせないビタミンB群も豊富です。

 日本の食文化とともにあったニシン。冷蔵・冷凍技術が、発達していなかった当時は、保存食として加工されて流通していました。お正月に欠かせない数の子をはじめ、にしんそばや、昆布巻き、ニシン漬けに使われる身欠きにしん、飯寿司、丸ごと糠漬けにした糠にしんなどなど、今も身近な食品にニシンが使われています。多彩なニシン加工品も、ぜひ味わってみて!

 「ニシンの臭いや、小骨が多いのが苦手…」そんな人も美味しく食べられるニシン加工品が誕生しました。北海道立総合研究機構 中央水産試験場と食品加工研究センターがタッグを組み、レトルト(加圧加熱殺菌)の技術を応用して、ふっくら柔らかで骨まで食べられる一方、臭みや、身崩れ、ドリップを抑える画期的な加工技術を開発。「前浜に帰ってきたニシンを多くの人に食べてもらいたい」という思いから、余市の水産加工の老舗が、「骨まで食べられるやわらか一夜干しにしん」として商品化しました。余市町の道の駅などで販売中で、ニシンフェアのスタンプラリーの景品にもなっています。