かつて日本海沿岸の町に“ニシン御殿”と呼ばれる豪邸が建つほど獲れていたニシン。その後、長年にわたり不漁が続いていましたが、ここ10年ほどでニシンの漁獲量が再び増えているのをご存知ですか?
なぜ増え始めたのか、そして北海道でのニシンの歴史や美味しさを知るために、石狩&小樽に行ってきました。
「とれてます!Oh!!さかなフェア」 アンバサダー
札幌生まれ・札幌育ちの食と酒をこよなく愛するアラフィフ。(株)リクルートHotpepperの営業を経て、WEB情報サイトSapporo100miles編集長として約15年間、食や観光の情報発信し続け、現在はSAPPORO YARD【オサナイミカが行く!】を中心に、いくつかのサイトでWEBライターとして活動中。
お話しをお聞きしたのは、石狩湾漁業協同組合の専務理事である和田さん。
『厚田漁港で揚がったニシンを、稚魚を育てる施設がある羽幌町へ輸送し、そこである程度大きく育ってから、海に放流しています。15の漁業協同組合と漁業関係者が協力し合い、その結果、日本海北部海域のニシンは年々漁獲量が増えてきた。』と、和田さんから教えていただきました。
そのような努力のもとに今のニシン漁があることを、この取材で初めて知りました。また2022年には、国際的に認められている“MEL認証”という日本発の水産エコラベル認証制度も取得し、未来につなげる漁業・魚食文化の推進に、協力していく取り組みをされているそうです。
そして羽幌町にある、北海道栽培漁業振興公社の柳澤さんに、“栽培漁業”についてお話をお聞きしました。『厚田漁港から運ばれてきたニシンのお腹から卵を取り出し、人工授精~孵化させ、海水の入った水槽で稚魚を育て、ある程度の大きさにしてから海に放流しています。
そうすることで、他の魚に食べられるリスクが減り成長しやすくなります。作業は冬期間に行われるので、スタッフは寒さと闘いながら作業しています。』そんなに手がかかっていたなんて!!『ニシンの育ての親』なんですね!と、感謝の意を込めて伝えました。ちなみに栽培漁業は、ニシンに限らず全国各地で様々な魚で行っていると聞き、当たり前に食していた魚に対し、もっとありがたみを感じながら味わおうと思いました。
小樽市祝津にある三浦水産さんは今年で創業114年になる、小樽でも古くからある海産物の加工品会社。4代目の三浦社長にお話しを聞いたところ、ご自身が会社に携わった頃は、ニシンが全然獲れなかったそうです。
『多くの漁業に携わる人たちのおかげで十数年ほど前から石狩湾系のニシンが獲れるようになり、その頃から小樽の前浜産のニシンにこだわって数の子や身欠きニシンを製造しています。より多くの方にニシンを身近に感じていただけるよう、オリジナルの加工品などの開発も行っています。』とのこと。特に“鰊たまり干し”は、ご飯のお供にも酒のアテにもなる、世代問わずオススメできる商品!
ニシン漁で繁栄した網元は北海道にいくつかありますが、中でも小樽の青山家は巨万の富を築き上げた豪商と言われています。その象徴となるのが旧青山別邸。『とにかくお金に糸目をつけずに、最高の材料と職人を使い、一流品を揃えた豪邸で、現在の金額にして31億円とも言われています。』と、オーナーの佐藤さん。
そんな佐藤さんは、この建物を見た時に魅了され、自分が守っていきたい!と当時の所有者を説得、購入し、現在のオーナーとなったそう。『小樽の歴史はニシン漁なしでは語れません。そしてニシン御殿はその歴史を伝える大切な遺産だと思っています。ぜひ多くの皆様に歴史的価値も含めて、旧青山別邸を知ってもらいたいです。』と、本当にこの場所を愛していることが伝わってくる熱い方でした。そして私もこの建物の素晴らしさを多くの人に伝えたい!と思いました。
旧青山別邸のお隣りにある“小樽貴賓館”では、祝津の前浜で獲れた脂の乗ったニシンを一夜干し身欠ニシンにし、化学調味料は一切使わず、大釜で骨まで柔らかく炊き上げた甘辛ニシンを味わうことが出来る、“にしんお重”が人気。錦糸卵そして白米と一緒にいただくと、箸が止まらなくなり、あっという間に完食してしまいました。
料理長の高橋さん曰く、『実はお酒のツマミとしても抜群の味付けで、ニシンだけの単品もあるんですよ』と、アルコール好きの私としては聞き逃せない情報もいただきました(笑)次はお酒とともに味わってみたいです!窓から眺められる旧青山別邸の庭の風景も、にしんお重の美味しさを引き立ててくれました。
ニシン蕎麦といえば京都が有名ですが、北海道でも郷土料理として古くから親しまれてきました。そのニシン蕎麦を1954年から小樽で営業し続けている“小樽・蕎麦屋・籔半”さんの呼びかけで、“にしん群来蕎麦”として小樽市内のいくつかの蕎麦屋で、期間限定で提供しています。『ニシンをコンセプトに小樽の魅力発信を行っている関係者の方から、ニシンの産卵の時に海が真っ白になる群来(くき)に見立てたニシン蕎麦を作ってはどうかと提案いただき、とろろを使用して群来蕎麦を作りました。
毎年提供時期になると、この蕎麦を目当てに来店されるお客様もいらっしゃるんですよ』と、若女将の河野明香さんが教えて下さいました。いただいてみましたが、とろろ以外にもたっぷりのわかめ、そして細かく砕いた数の子が、柔らかく炊いた身欠きニシンの上にのっており、食べ応え満点!食べ終わる頃には体も心もポカポカで、毎年食べたくなる気持ちが分かりました!!『特に数の子のプチプチ感がミスマッチなようでクセになる味わいとおっしゃっていただけるお客様が多いのです。』それ、すごく分かります!!一粒たりとも残したくない気持ちになりました(笑)
明治から大正にかけて、ニシン漁で巨万の富を築き上げた青山家。2代目当主の政吉氏、そして政吉氏の娘・政恵さん(三代目当主)が、現在の金額で約30億円をかけ、全国から一流の大工や材木を集め、6年の歳月をかけて完成させた大豪邸で、国の登録有形文化財。家屋には6畳~15畳の部屋が18室もあり、それぞれが美術品の展示室のように調度品が飾られていたり、襖に作品が描かれていたりと見ごたえ満点です。
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はまます郷土資料館(旧白鳥家番屋)
北海道石狩市浜益区浜益77-1
- 営業時間
- 10:00-16:00 ※5月1日から10月31日まで
- 休館日
- 火曜日(祝日と重なる場合はその翌日)
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旧下ヨイチ運上家
北海道余市郡余市町入舟町10
- 営業時間
- 9:00-16:30
- 休館日
- 月曜日と祝祭日の翌日(月曜日が祝日の場合は開館)
※閉館:12月中旬-4月上旬
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旧余市福原漁場
北海道余市町浜中町150
- 営業時間
- 9:00-16:30
- 休館日
- 月曜日と祝祭日の翌日(月曜日が祝日の場合は開館)
※閉館:12月中旬-4月上旬
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よいち水産博物館
北海道余市郡余市町入舟町21
- 営業時間
- 9:00-16:30
- 休館日
- 週月曜日・祝祭日の翌日 ※閉館:12月中旬-4月上旬
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鰊伝習館 ヤマシメ番屋
北海道積丹町大字美国町字船澗39
- 営業時間
- 9:00-16:00 ※開館:5月1日-10月第1週
- 休館日
- 火曜日、水曜日
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鰊御殿とまり
北海道古宇郡泊村大字泊村59-1
- 営業時間
- 9:30-16:30 ※開館:4月上旬-11月初旬
- 休館日
- 月曜日(祝日の場合は翌日) ※7・8・9月は休まず開館
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旧花田家番
北海道留萌郡小平町字鬼鹿広富35-2
- 営業時間
- 9:00-16:00(11月-4月)、8:00-17:00(5月-10月)
※入館は閉館時間の30分前まで
- 休館日
- 月曜日
※6月第3月曜日~8月第2月曜日は無休※臨時に休館となる場合もあります。
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旧笹浪家住宅
北海道檜山郡上ノ国町字上ノ国236
- 営業時間
- 10:00-16:00 ※開館:4月上旬-11月上旬
- 休館日
- 月曜日(祝日の場合は翌日)、祝日の翌日
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旧中村家住宅
北海道檜山郡江差町字中歌町22
- 営業時間
- 9:00-17:00
- 休館日
- 4月-10月/無休、11月-3月/月曜日、祝日の翌日年末年始